
「夢より短い旅の果て」 柴田よしき 角川書店 2012
2013年05月23日 17:23『夢より短い旅の果て』は、8つの異なる路線での旅を通じて体験した出来事や、一つ一つの路線での“人との出会い”を中心に、主人公の香澄が、ある目的のために鉄道での旅を続ける話として物語は展開していく。自然や風景に対するこまかな表現とともに、登場人物それぞれの想いが、鉄道の旅を通して全面的に表されており、まるで同じ空間に居て、同じように旅の空気を感じる事が出来るような、印象深い描法である。さらに、「鉄道の旅」というひとつの大きなテーマの中で繰り広げられるこの物語は、時間や雑事に追われて日々生活する現代人にとって忘れがちな“息抜き”をする機会を与えてくれるような本であり、自分の人生に、時間に“ゆとり”を持つことで、今、この時を大切にしてほしいという筆者の想いが込められた一冊であるといえる。
(石川愛梨)
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